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映画公開を前に、石井克人監督と、この作品が映画デビューとなるヒロイン役のマイコさんにインタビュー。なぜ今70年前の映画を、『鮫肌男と桃尻女』『PARTY7』の石井監督がカヴァーしたのか、そしてヒロイン役・マイコさんの試練とは・・・。 |
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映画『山のあなた 徳市の恋』より

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「実を言うとね。僕は童貞の話がとても好きなんですよ(笑)。
恐らく、童貞?(笑)というか女性に対して無垢な徳市が、男女の関係は酸いも甘いも経験済みであろう美千穂に挑む姿って、対比がとても面白い」。(石井監督)
美しくも、謎めいたヒロイン・美千穂に恋する「2人+半人前」の男たち。しかし、徳市(草なぎ剛さん)も大村(堤真一さん)も美千穂への接し方は、実に不器用で、いじらしさが漂っている。
石井監督が自ら「好き」と語るように、監督の過去作品では、童貞(処女)と大人な女(男)が対比されて描かれていることが多い。例えば、ヤクザに追われる百戦錬磨の男・鮫肌と、ホテルで働く垢抜けない女性・トシコ(桃尻)との逃避行を描いたコメディ映画『鮫肌男と桃尻女』(1998)。また、『茶の味』(2003)では、片想い人生をひたすら歩んできた主人公の中学生・ハジメが、都会から転校してきた大人びた同級生・アオイに一目ぼれしてしまう。アオイが自分と同じ囲碁部に入部すると知っただけで狂喜し、未来への妄想をふくらましながら、満面の笑みで自転車をとばして帰るハジメの姿は、どこか今作品の登場人物、徳市や大村に通じるものがある。

「童貞男とオトナの女」を対比した人物設定は、従来の石井監督作品と共通するものの、今回、監督が挑戦したのは、はるか昔のモノクロ映画のカヴァー。映画に流れる空気感も、これまでの監督作品とは大きく異なる。なぜ今、70年前の映画に注目したのか。
「それまでに作った『鮫肌(男と桃尻女)』や『PARTY7』はストーリー展開も映画の雰囲気も、ちょっと日本離れした“アメリカン”なものだった。でも、同時に“アメリカン”とは真逆にある“日本家庭の縁側”的なものもずっと表現してみたくて、それに初めて挑戦したのが『茶の味』でした。
“かつて日本家庭の縁側に見られたほのぼの感”を模索し続けて、『茶の味』を作り終わった後ですかね。清水宏監督の「簪」や「按摩と女」を見てみたら、自分がやりたかったことの答えが、映画の中に散りばめられてあって、目からうろこがおちました。ああ、これだ!と(笑)。
それで僕が追い求めていた答えが分かった瞬間、今度は清水監督作品の完全カヴァーがやりたくなったんです」。(石井監督)
これまで石井監督が捜し求めていたこと――。つまり“日本家庭の縁側”的な演出を、70年も前にさらりと作っていたのが、清水宏監督だった。
そして、石井監督の目指すものを作り上げるのには、作り変える要素の強い「リメイク」ではなく、そっくりそのまま再現する「完全カヴァー」
が一番ベストの方法だったのだ。 |
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キャスティングや演出も、原作に忠実なかたちで進められてゆく。
「徳市役には、すぐにピンときた人物がいました。オリジナルの俳優さんと雰囲気が瓜二つ。徳市役は、絶対に剛君しか、あり得なかった。逆に美千穂役は、かなりの数の女優さんを探したけど、なかなかピンとくる人がいなくて。そこで発想を変えて、全く知らない無垢の新人はどうかという提案があったんです。モデルとして活躍していたマイコさんを見て、とりあえずひと月間、お芝居と所作の練習成果を見定めてということにしました。1か月後、満場一致で合格!」。(石井監督)
「とにかくオリジナルに忠実に、と監督から言われ続けていたので、それだけはきちんとやろうと心掛けました。原作は、100回以上見たのではないでしょうか。
昭和の大女優・高峰三枝子さんが演じた役を、演技初心者の私がやる訳ですから。高峰さんの言い回しや所作を刷り込むために、いつも本番ぎりぎりまでDVDとにらめっこしていました」。(マイコさん)
スクリーンではクールな女性を演じるマイコさんだが、インタビューでは、折り目正しい丁寧な言葉遣い。雰囲気も誠実そのものだ。この、「ひたむきさ」が、難しい役柄を克服できた最大の要素といえるのかもしれない。 |
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映画『山のあなた 徳市の恋』より |
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(C)2008 フジテレビジョン・J-dream・東北新社・東宝
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完全カヴァー作品というのはほとんど前例のない試み。マイコさんが「100回以上、DVDを見続けた」と言うように、監督にとっても、役者にとっても、細部に渡って再現するのは、相当難しい作業だったようだ。
「特に大変だったのは、下駄を履いて河原を全速力で走るシーン。原作の高峰さんは下駄も履き慣れてるから、すごいスピードで走っているんです!でも私は、足がガタガタになって、いつ転ぶかという怖さと、鼻緒がすれる痛みとの戦いでした。まだ、私の足の皮はむけたままなんですよ(笑)」。(マイコさん)
「完全カヴァーとはいえ、現代の観客がストレスなく物語に入っていけるような工夫は必要だなと思いまして。当時の衣装や時代を伝える小道具、カメラアングルなんかは、オリジナルに忠実に再現する必要がありましたが、例えば、音楽はすべて変え、カラーの映像になじむようにしました。
また、原作では、徳市や美千穂の心の動きが意外とさらっと描かれているんですよね。『山のあなた』では、そのへんの“余韻”をきちんと残すような演出にして、最終的にオリジナルより20分ほど長くなりました」。(石井監督) |
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「とても幸せな2か月でした。すごく楽しくて、クランクアップの日は、皆さんと別れるのが辛くて、辛くて、涙がぽろぽろ出てしまいました。それだけ撮影が楽しかったんです」――。
マイコさんが言うように、石井監督は現場の雰囲気作りの天才、とも評される。実際、インタビュー中も笑顔を絶やさず、穏やかに受け答えをしてくれた監督。実は撮影中もスタッフ、出演者の間では笑いが絶えなかったという。石井監督の真骨頂が、実はそこにある。
「現場の雰囲気は、フィルムに写る。現場が楽しくないと、お客さんに楽しんでもらえる作品はできない」――。
これが、石井監督の信念だ。
穏やかで、豊かな昭和の原風景がこの夏、70年の歳月を超えて届けられる。いつしか、忘れかけていた心の機微や温もりを、この映画で私達は、きっと感じ取れることだろう。
取材・文/湯川 桂
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DVD 『鮫肌男と桃尻女』 |
| 4,441円(税込) 石井克人監督 |
| 組織の金を持ち逃げした男、鮫肌(浅野忠信)と不幸な少女トシコの逃避行を、独特のビジュアルセンスでユーモラスに描く。 レンタルはこちら |
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『按摩と女』 |
| 3,591円(税込) |
『山のあなた 徳市の恋 』のオリジナル版。 ひとりの按摩が温泉場でいわくありげな美女にひかれていく様と、そこでの人々の交流をユーモアたっぷりに描いている。
レンタルはこちら
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『山のあなた 徳市の恋 』
ガイドブック |
| 1,299円(税込) |
| 出演者のオフショットや、映画の舞台裏をちょっぴり見せるメイキング企画、温泉ガイド、監督のイラストによるキャラ紹介など、映画の世界観が存分に楽しめる。 |
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『クサナギバコ』 |
| 税込4,980円 |
| エッセイ集「クサナギロン」と写真集「山のあなた 徳市の恋」の2冊をまとめ、さらにここでしか手に入らない映画のメイキング映像をおさめたDVDとオリジナルクサナギ手ぬぐいをセットにした豪華スペシャルBOX。 |
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『クサナギロン』 |
| 税込2,000円 |
| 雑誌「MORE」にて、5年間にわたって連載された「僕の隠れ家へようこそ」を1冊にまとめたビジュアルエッセイ。本誌未収録写真も特別収録。あたたかな人間的魅力も人気の草なぎ剛が、恋愛、仕事、生き方、人間関係、など誰もが直面することについて、心打たれる力強いメッセージを発信。 |
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